いりおもている

西表島 + TALE = いりおもている。西表島へ移住するケツイをみなぎらせた男が、島の生き物や生活のあれこれについて書き綴るブログです。

ペンさんご夫妻との西表島同行記②【夜の道路と磯でフィールドワーク】

前回はこちら
iriomotale.hatenablog.com

気候が合えば12月末ですら道路にヘビが何匹も現れるのが西表島
生き物を探すなら夜は絶対に外せません。


今回はペンさんの「夜の磯で生き物を探したい」という希望もあるので、敢えて遠いポイントを目指して、道中の生き物も探していく作戦でいきます。一石二鳥ですね。


ヤシガニは夜24℃を超えるような日じゃないと出てこないらしいんですよ~」
「ヤマネコ見れたらいいなあ」なんて道中も生き物トークに花を咲かせる男性陣。
しおさんは後ろの座席で星を見ていました。この日は新月、夜は滅茶苦茶暗いですが代わりに星を見るには最高の天気!

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今やスマホで何でも出来るんだな…と驚き
しおさんに教えてもらったんですが、最近のアプリって凄いですね。
スマホのカメラモードを用いて、向けた位置にある星がリアルタイムで見られるアプリがたったの400円!
秋には玄関出て見上げたら天の川が見れるのが西表島なので、これは使えると思い即インストール。
いいもの教えてくれてありがとうございます!



暫く走っていたら、ふと対向車線に何かがいるのが見えてきます。



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え?




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は?




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シーズン中でもこのサイズはなかなか出会えない
何で歩いてんのお前!?!?!?
出ないとかウンチクほざいてた俺の面子よ

しかも滅茶苦茶デカい!
1.5kg、いや2kgあるか…!?
なんにせよ島に来てから1回しか見たことの無いような大物だ!
脚の欠損も無い美個体が、まさかこんな時期外れに現れるなんて思いもしませんでした。
日中暑かったのが功を奏したのかな?
推測は大いに外れましたが、外れてくれて見られたし寧ろ超ラッキー!


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個人的にヤシガニの魅力はこの頭部に詰まってると思います。つかペンさんのスマホカメラ性能よすぎ
ヤシガニって意外と逃げ足が速いんですよ。
おまけにパワーも半端じゃない。指なんて挟まれたら終了だし、歩脚の先が掠めただけでも怪我をしかねない。鋏脚の可動範囲も意外と広いので、知らずに迂闊に触ると本当に危ない。
ここまで逃げずにじっくり撮らせて貰えたのは、まだ気温が低くて本調子じゃなかったからだと思います。

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この迫力はさすが世界最大の陸棲甲殻類といったところ
この後地元車が迫ってきてあたふたしてましたが、降りてきてコイツを見て開口一番「こんなに大きいの初めて見ました!」と驚いてました。

ヤシガニって年に1回か2回しか脱皮をしないんですね。
しかもその際に大きくなる甲長がたったの5mmだけなので成長が途徹も無く遅い。
ソフトボール大のものですら10年モノだし、今回のは下手すりゃ自分より年上の可能性だってある。

自分も一度食べた事あるし「一切食うな!」と言う気は無いんですが、誰彼構わず話題作りの為に捕ったり食べてもいい生き物でもないと思ってます。
ついでに言うと、味的にも同じ額で毛ガニかタラバガニでも食った方が満足度高いんじゃないかなあ…


そして撮影会も済んで茂みへと帰されました。轢かれるなよ~



途中休憩を挟んでマングローブテナガエビを見たりしつつ、目的のポイントへ到着。
ここからはウェーダーを着用して海に入ります。


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沖縄のリーフでよく見るヒメハギ。日中はもっと黄色いけど夜だから退色してますね
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いわゆるノーマルのチョウチョウウオかな?この手の魚は種類も多い上に専門外だから全然わからん…
夜は寝ている魚も多いので捕獲が比較的容易です。
沖縄の風物詩にイザリという干潮時のリーフを歩いて貝を拾う漁がありますが、その際スルーするような生き物が全部成果になるので楽しすぎる!
島に来てからだいぶ感覚が麻痺してしまってましたが、やっぱり生き物好きと行動すると色々思い出せるからいいですね。

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オオイカリナマコも結構います。一瞬ウミヘビかウツボかと思ってギョッとする
ペンさんが「食べたい」と言ってましたが、流石に民宿の調理場を借りてコレを捌く訳にもいかないので断念(笑)
自分赤ナマコは好物ですが、コイツはとてもじゃないけど食指が動かない…

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夜行性なのでウツボの仲間もこぞって現れる
ゼブラウツボなんかも時々見られますよ!」と話してたらマジでいました。
ヤシガニと違って空気を読んでくれてありがとう。
いや、ヤシガニは読まなくて大正解でしたけどね。
他にはアセウツボと青っぽい縞模様のウツボがいましたが、後者の名前が分からない…

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日本最強の毒ガニことウモレオウギガニ。スベスベマンシュウガニもカノコオウギガニもそうだけど、何でリーフって毒ガニばっかりいるんだろうか
沖縄のリーフには何種類もの毒ガニがいますが、コイツが持つのはフグ毒のテトロドトキシンと麻痺性貝毒サキシトキシンという、まさに最悪の殺人合わせ出汁。
うっかり味噌汁に入れないようにしましょうね。

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サザエが落ちてて中身がこれだとちょっとイラッとする(笑)
ヤドカリinホラガイ。
立派な貝殻が海中に落ちてるとほぼ確実に入ってる気がします。
状態が良かったから普通に欲しかったけど、追い出すのは気が退けてリリース。

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針が短かったり、よく見るとノーマル種と結構違う
でっかいヒトヅラハリセンボン!
可愛いけど噛まれるとヤバいので丁重に扱います。
最大50cm以上と通常のハリセンボンより大型になる種で、通常種と同様唐揚げや味噌汁にすると旨いです。
因みに名前にあるヒトヅラの由来ですが、
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「こうすりゃ分かりやすいんじゃね?」と以前メガネを装着してみた図
このように上から見た時の模様が顔、つまり人面に見えるから。
シーマンみたいなハリセンボンじゃなくて心底ホッとします。




ここで挙げた種類以外にも、倍以上の生き物が見られて大満足で撤収!
行きしなも大物ヤシガニを見られたし、生き物探しはペンさんにお任せして安全運転で帰ります。


暫く何も無い道中が続き、やっぱり気温も湿度も低いせいかなー?なんて考えてたその時。
助手席から突然の叫び声。



「ネコ!!ネコ!!」



は!?え、マジで!?

どうやらガードレールの下にイリオモテヤマネコがいたらしい。
しまった、道路ばかり見てたから全然気付かなかった。

手遅れかもしれませんが、車を停めて後ろを見ます。
車で通り過ぎた後だし流石にもう逃げただろうなってまだいるー!!!!

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間違いない、このシルエットは…!!
信じられない、イリオモテヤマネコが逃げずに目の前で動いてるなんて…!
そっと近付いてカメラを構えます。
ごめんよ。ちょっとだけ照らさせてね。

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イリオモテヤマネコと目と目が合った瞬間。まさかこんなに寄れるとは
撮れてしまった…
この丸い耳とずんぐりした体型がイリオモテヤマネコの特徴。間違いない、イエネコなんかじゃない。
これでヤマネコを見るのはまだ2回目。
初回は道路に飛び出してきたところを停車し、カメラを構えたら逃げてしまいました。
しかし今回は約2分も目の前で動く姿を観察できました。こんなにじっくり見られるなんて信じられない…!
良くはない傾向ですが、相当人馴れてたんだろうか…


この時間に撤退したのも、通り過ぎて停車せずそのまま帰らなかったのも、全ては運。
それらが上手く噛み合った上で目を凝らしていたから見付けられた、まさに奇跡の一瞬でした。
それにしても初の西表島でこの体験はレアすぎますよ奥さん…!


ペンさんの一番見たかった生き物らしく、滅茶苦茶嬉しそうにしてるのを見て心底よかったと胸を撫で下ろします。
自分も勿論嬉しかったですが、それ以上に「轢かなくてよかった…」という脱力感でいっぱいでした。

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「コホー!コホー!」とよく通る可愛げのある声で鳴くリュウキュウコノハズク。コイツもきっと生前は…
生物が豊富な地域で避けて通れない問題が交通事故。
この日も集落間の片道だけでサキシママダラ1匹、リュウキュウコノハズクに至っては2羽もの轢死体を確認。

どちらも餌を求めてよく路上に現れる生き物ですが、ヘビ類は木の枝や落ち葉、冬場限定ですがトラックからこぼれたサトウキビと誤認して判断が遅れてそのまま…という事故が後を絶ちません。
フクロウ類は車のライトに驚いて立ち竦むのか、すぐに飛んで逃げられないためスピードを出しているとブレーキが間に合わず轢かれてしまう事が多いです。尤もこちらは鳥なので、いれば見て分かるため飛ばしていなければそうそう轢かないとは思うんですが…

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最もよく見るヘビのひとつ、サキシママダラ(の轢死体)。これを食べに来たヤマネコやカンムリワシ等が轢かれる二次被害も怖い
ヤマネコも例外ではなく、推定生息数がたったの100頭に対して昨年で4頭、一昨年に至っては9頭もの死亡事故が発生してしまいました。


今回目の前に飛び出していたらと思うとゾッとするし、ましてやあんなに人馴れしている個体、今回はよくてもいずれは…



なんて色んな事を考えながら帰宅したのは午前3時。
ようやく心身共に落ち着いて休められたので、とりあえず撮れた写真をつまみに第3のビールを飲みつつ武者震い。


一年半住んでるけどようやくヤマネコ撮れたのかあ。めっちゃ嬉しいけどなんか突然すぎて実感ないなあ。
なんて考えつつも 、明日に備えて寝ます。




皆さんも八重山にお越しの際は、特に夜間はくれぐれも安全運転でよろしくお願いします。
あなたの安全運転が野生動物を救う。